製造プロセスにおけるプロセスマイニング分析とその活用イメージ

製造業においてプロセスマイニングは、工程の流れや業務パターンを分析し、ムリ(過度の負荷)、ムダ(無駄)、ムラ(不均一)の3Mを特定することができます。プロセスマイニングツールは、工程経過時間や業務パターンを可視化し、ムラを初めに発見します。次に、繰り返し業務や滞留作業を見つけ、ムリとムダを特定することで、業務の効率化やアジリティの向上を目指します。この分析は、製造業のプロセス改善と透明性の確保に貢献し、組織と個人が不確実なVUCA時代を生き抜くための有効な手段となります。

目次

現代社会をとりまく環境

現代社会は目まぐるしく変化し続け、将来の予測が困難なVUCA時代と呼ばれています。VUCAとはVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性=両義性がある)の頭文字をとった、社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなる状況のことを意味します。このVUCA時代に対処していくために、*アジリティを上げていくことが有効です。プロセスマイニングによる分析は、3M(ムリ・ムダ・ムラ)を無くし、アジリティを上げるための糸口(改善ポイント)を見つけることができます。こちらではプロセスマイニングを用いて、あらゆる3M(ムリ・ムダ・ムラ)を発見する分析について紹介をしていきます。

*アジリティ:もともと機敏さ、素早さ、敏しょう性といった意味ですが、ビジネス用語としては、目まぐるしい環境変化に即応するために欠かせない、経営や組織運営のあり方における機敏性を表します。意思決定のスピードや効率、チーム編成や役割分担のフレキシビリティなどを含めた概念で、不確実性が高く、不透明な時代を、組織と個人が生き抜くためのキーワードとして注目を集めています。

アジリティ(Agility)とは――用語の意味、ビジネスで求められるスピードとは – 『日本の人事部』

製造業界の代表的な3M(ムリ・ムダ・ムラ)

それでは、まず3M(ムリ・ムダ・ムラ)について説明していきます。製造業の業務改善の基本は以下の3M(ムリ・ムダ・ムラ)を取り除くことです。

  • ムリ:負荷が能力を上回っている状況
  • ムダ:逆に負荷が能力を下回っている状況
  • ムラ:ムリとムダの両方が混在して時間によって現れる状況

プロセスマイニングは、業務パターンと工程経過時間に着目した分析が得意です。このように時間に着目した分析が可能なため、ムラが発生していることがまず初めに分かります。次に、実際に描画されたプロセスパターンや各工程の時間を見ていくことでムリ(繰り返し業務、滞留作業)とムダ(人員過剰、重複作業)を特定することができます。ここから先は、業務パターンの透明性の確保と全工程の長時間化の原因分析についての具体的なユースケースを紹介していきます。

ムリ・ムダ・ムラ|創造と変革のMBA グロービス経営大学院

ユースケース

業務パターン透明性の確保

最近の製造業務を含む業務プロセスは非常に複雑で、様々なセンサー、ITシステムや部門を通ります。1人の従業員が関わる領域は業務プロセスの一部であり、全てを把握できているわけではありません。この状況は、業務の参加者間の不信感が生まれたり、柔軟性が欠如することで、ムラの発生につながる可能性があります。実際のプロセスを完全かつ詳細に知っている人だけが、ムラを無くし、アジリティの向上に貢献できます。

ここでは例として、自動車部品の取り付けプロセスについて可視化してみましょう。以下のプロセス図のように製造パターンに関わるデータを収集し、プロセスマイニングツールへインポートします。インポートしたデータを基にプロセス図の描画、観察をしていきましょう。このように全業務をデータという事実として確実に把握したり、探索的に分析することでムラを発見することができます。

一連業務の長時間化

先ほど、データ収集、プロセス図描画によって透明性が確保されました。探索的分析により、バリアント1とバリアント2を比較するとバリアント2のスループットタイムがバリアント1よりも16日長くなっていることが分かります。バリアント1は標準化された業務プロセスであるため、バリアント2に問題が隠れていると予想できるので、バリアント2のプロセスを比較してみましょう。

左図がバリアント1、右図がバリアント2です。この二つのバリアントの相違点は、工程の繰り返しの発生有無です。繰り返し部分の工程はスループットタイムが5日余計にかかることがバリアントエクスプローラーから分かります。

今回の一連業務の長時間化に対する分析では、ムリの一つの、繰り返し業務の発生が原因であると分かりました。このムリの発見以外にも、同じ業務パターンなのに、異常に工程時間が短い場合は人員過剰によるムダが発生している可能性がある、などのムダの発見にもプロセスマイニングは使用できます。

製造業に対するプロセスマイニング分析はムリ・ムダの発見に役立つ

今回は、VUCA時代に対処するため、アジリティを向上させる方法の一つとして、3M(ムリ・ムダ・ムラ)を発見するためのプロセスマイニング分析を紹介しました。プロセスマイニングによる分析では、透明性の確保と探索的分析から分析をスタートさせてムラを発見し、発見したムラからムリ・ムダという原因を見つけるという流れで行う事ができます。

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この記事を書いた人

Himari is the COO of JPMT, specializing in process mining. She brings to JPMT her experience in business improvement projects using process mining at a telecommunications company.

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