Purchase to Pay(購買)プロセスのプロセスマイニング分析と活用イメージ

Purchase to Pay (購買)プロセスに対するプロセスマイニングは、購買から支払いまでのプロセスを分析し、業務効率を向上させる方法を探ることができます。この分析は、スループットタイムの短縮、運転効率の向上、運転資金の最適化、そしてデジタル化の推進といった視点から行われ、特定の改善点や不正行為の発見をします。プロセスマイニングツールはイベントデータを利用してプロセス図を生成し、アクティビティの流れや時間を視覚的に理解しやすくします。これにより、P2Pプロセスの改善点を特定し、企業の競争力向上とコスト削減を実現する手助けとなります。

目次

Purchase to Payとは、購買から支払いまでの一連のプロセスである

Purchase to Pay(別名P2P、Procure to Pay)とは、企業で直接材/間接材などを調達する際に必要な、調達から支払いまでの購買に関する一連の業務です。より具体的にはサプライヤーの選定からサプライヤーへの支払いまでの業務を指します。

P2Pプロセスは、主に右の5つのフェーズで成り立ちます。

プロセスマイニングでは、この5つのフェーズを中心としたイベントデータがプロセス図として表現されます。

SAP社がPurchase to Payについて解説してくれています。もっと詳細に知りたい方はこちらをご覧ください↓

https://www.sap.com/products/spend-management/procure-to-pay/what-is-procure-to-pay.html

P2Pプロセスを分析することで業務効率向上につながるヒントを得られる

ではなぜ、P2Pプロセスを改善する必要があるのでしょうか?その理由は全社的な業務効率(時間短縮やコスト削減)の向上を見込めるからです。世界の動きが速くなり、競合他社よりも優位性を保つために、サービスをより短時間で提供する必要がでてきました。この短時間での提供は、P2Pプロセスの改善によるスループットタイムの短縮によって実現できる可能性があります。また、コストを削減することによって、自社の利益を守り、結果的に競合他社よりも優位に立つことができる可能性があります。

P2Pプロセスの中でも、サプライヤーの効率性に焦点を当てることが重要です。サプライヤーから購入された商品は、全体的な費用の高い割合を占めるからです。

このように、P2Pプロセスは競合他社よりも優位に立つために改善を進めることが必要であり、中でもサプライヤーとの関係に焦点を当てて、分析していくことが重要です。

P2Pプロセスマイニングのユースケース

P2Pプロセスマイニングのユースケースは以下4つの改善視点に大別できます。

  1. スループットタイムの短縮:プロセスエクスプローラーによる分析によって、アクティビティのスループットタイムを削減可能性を発見し、サプライヤー、購買組織、輸送業者などの非効率の根本原因を特定します。
  2. 運転効率の向上:非効率なプロセスや不正行為を排除することで、業務の非効率性を低減させることが可能になります。
  3. 運転資金の最適化:マスターデータ、POS、請求書に記載されている様々な支払い条件とプロセスエクスプローラーを比較して、より有利な支払い条件を発見します。
  4. デジタル化を進める:受注、受注対応、受注変更、請求書、納期予測、在庫報告などのメッセージタイプに外部サプライヤーを接続してEDI*を導入します。

*EDI(Electronic Data Interchange、電子データ交換):企業や行政機関などがコンピュータをネットワークでつなぎ、伝票や文書を電子データで自動的に交換すること。

それでは、各改善視点別の具体例を説明していきます。

①リワーク特定による、スループットタイムの短縮可能性の発見

「発注書の作成」から「商品の記録」までのスループットが長いという課題を抱えている時にもプロセスマイニングによる根本原因分析は可能です。スループットタイムが長い時のプロセスエクスプローラーを観察すると、「数量変更」というリワークアクティビティの発生が発見できました。これは数量変更により、最初の計画よりも多くの商品の納品が必要になったため、スループットタイムが長くなることを示しています。「数量変更」が発生したケースは、発生していないケースよりもスループットタイムが長くなることから、「数量変更」の発生は最小限にすべきであることが分かりました。

②不正行為の発見

P2Pプロセスをプロセスエクスプローラー上で観察することで不正行為の発見にもつながります。「請求書発行」の後に「発注書の作成」が発生しているケースは不正行為の疑いがあります。このように、不審なアクティビティの発生順序を発見することで不正行為の発生を特定することができます。特定に伴い不正を正していくことで、リスクの削減、逸脱プロセスの改善により、運用効率の向上などが見込めます。

③支払い期限の遵守による割引の利用

サプライヤーによっては、支払いが早ければ早いほど、現金割引をすることがあります。例として、①14日以内の支払いで3%の現金割引、②60日以上の支払いで割引無という条件を交渉することでコスト削減を実現できます。各サプライヤーごとにプロセスエクスプローラーを観察し、14日以内に納品可能なサプライヤー、不可能なサプライヤーを特定することで、条件交渉するサプライヤーを選ぶことができます。

④EDIの活用促進によるデジタル化

サプライヤーとの受注や支払いに関するコミュニケーションにメールやFAXを使用する時は、手作業で行われ、多大な労力やリワークが発生するミスに繋がります。また、ミスや変更要求に対応していると、支払いの遅延やデータの不一致による追加のやり直しが発生します。

この非効率性を改善するために、全てのコミュニケーションを電子的に管理しすることが効果的です。注文、注文対応、変更、発想通知、請求書などのメッセージタイプをEDIによってパッケージ化し、スピードと品質の向上と効率の向上を実現します。

プロセスマイニングは、非EDIサプライヤーとEDIサプライヤーのプロセスを比較することでEDIサプライヤーの方が、より良い業務効率を実現していることが発見できます。EDI対応箇所の増加はリワークを減少させ、結果的にスループットタイムの大幅な削減に貢献します。

以上がP2Pプロセスマイニングの具体的なユースケースです。主な改善視点は4つあります。リワークの発見によるスループットタイムの短縮、不自然なプロセス順序の発見による不正特定、支払い時期の条件交渉による運用資金の最適化、EDI活用によるデジタル化です。

まとめ(購買発注を改善するといいことがたくさん!)

P2Pプロセスとは、調達から支払いまでの一連の業務を指します。このプロセスは競合他社よりも優位に立つために改善することが必要です。P2Pプロセスを改善することは、スループットタイムの短縮、運用効率の向上、コストの最適化など、会社にとっての様々なメリットに繋がり、結果的に会社全体の利益を守ることに役立ちます。プロセスマイニングは、これらの改善視点を分析する際に見たいプロセスや指標を、ピンポイントで提供してくれる技術です。P2Pプロセスの改善可能性を発見し、業務効率の向上を目指していきましょう!

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この記事を書いた人

Himari is the COO of JPMT, specializing in process mining. She brings to JPMT her experience in business improvement projects using process mining at a telecommunications company.

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