プロセスマイニングは業務において多岐に渡り活用することが可能です。今回は営業プロセスをプロセスマイニングを活用して改善していくことを想定した、プロセスマイニングの活用イメージについて紹介していきます。営業プロセスにおいてしばしば分析に用いられるのは、リード獲得から成約までのプロセスになります。プロセスマイニングによって解決できる課題やアプローチ方法、期待できる効果について解像度を高めていきましょう。
営業プロセスにおける課題
営業は業績に直結するため、そのプロセスは企業において改善の優先度が非常に高いものになります。その一方で、マーケットの変動や顧客の規模など、外的な要因によって営業戦略はケースバイケースで変化しますし、業務自体も勘や経験に補われる部分が多いです。そのため、最適な戦略を練ったり、ボトルネックを特定してプロセスを標準化するということに困難が強いられています。
業務プロセスと結びつく営業業務の課題を整理します。
- 理想的なフロー通りに営業が行われているか把握できていない
- 顧客に応じた営業プロセスを設計できていない
- 時間がかかることで、リソース不足やパフォーマンス低下に陥る
各課題に対するアプローチ
各課題についてプロセスマイニングをどのように活用すれば解決策を導けるか、そのアイデアを紹介していきます。
理想と現実のプロセスの乖離を分析する
- 理想的なフロー通りに営業が行われているか把握できていない
- 顧客に応じた業務プロセスを設計できていない
という課題に対しては、理想的な営業プロセスの流れを具体的にイメージし、「実際の営業プロセスとどれだけ乖離しているか」「何が違うのか」を可視化するのがベストです。プロセスマイニングを用いると、業務の流れを図式的に可視化することができます。”バリアントエクスプローラ”という機能を用いると、どんなパターンの業務が多いのかを可視化でき、実際の業務で頻繁に行われている営業プロセスのパターンを知ることができます。このプロセスが理想的なプロセスと一致しているかどうかを分析するのが良いでしょう。また、一部のプロセスマイニングツールには”コンフォーマンス”という機能が備わっており、理想的なプロセスパターンを手動で設定することで、実際のプロセスが理想から何%乖離しているか、逸脱したプロセスによく見られる傾向は何かを示してくれます。このような機能を用いて現実の営業プロセスの修正を繰り返すことで、営業プロセスを改善し、セールスの効率化や販売件数の向上を期待することができます。
サイクルタイムを短縮する
- 営業一件に対して過度な時間がかかることがある
- リソースが圧迫されたり、それによってパフォーマンスが低下する
という課題に対しては、実際に営業プロセスにかかっている時間を可視化し、リード獲得から成約あるいは逸脱までの一連の流れにかかる時間を分析するのが良いでしょう。
プロセスマイニングツールを用いれば、一連の流れに対する経過時間だけでなく、各業務におけるリードタイムを可視化することも可能です。
プロセスマイニングを活用したプロジェクトでは以下のような流れで、業務の効率化を行うことが多いです。
- 改善したい業務のスコープを決める(例:リード獲得から成約までのリードタイム削減)
- 改善しやすい箇所を特定する(例:リード獲得からのアプローチを迅速に行う)
- 主要なKPIを設定し、継続的に監視・改善する(例:リード獲得から初期訪問までの目標値を設定し、達成率を可視化する)
このように、リードタイムの可視化のアプローチをとることで営業業務におけるボトルネックの特定と解消を行い、セールスのさらなる効率化や理想的な販売プロセスの設計を行なっていくことが可能となります。
リードから成約までのサイクルタイム分析の事例もあるのでぜひ参照してみてください。
Lead-to-Cash Process Application – IBM Process Mining
営業業務をプロセスマイニングを用いて分析できるようにするためのアプローチ
ここまでのプロセスマイニングを用いた営業プロセス分析と最適化の話は、営業業務をデータ化し、プロセスマイニングツールにインポートしなければ始まりません。営業業務をプロセスマイニングにインポートできるログ(イベントログ)として利用するためのアプローチ方法を2つ紹介します。
- Salesforceなどの営業管理システムのデータを利用する
Salesforceなどの営業管理のシステムを利用している場合、帳票データからイベントログを作成することが可能です。プロセスマイニングは基本的に、業務の一連の流れを紐づけるケースIDと業務の内容を示すアクティビティ、そしてそのアクティビティが発生した時間を示すタイムスタンプがあれば利用可能です。Salesforceに限らずとも、Excelなどにこれらを表で記録した帳票データなどがあれば、活用できるかもしれません。
2. AIを用いて営業レポートをイベントログ化する
どんな営業業務(アクティビティ)が存在するかを列挙し、営業のレポートから各業務がどのアクティビティに当たるかを分類するというアプローチも存在します。こちらのアプローチは前者よりも高度なものになり、分析の精度も列挙したアクティビティの網羅性や分類するAIモデルの精度に左右されるためリスクはありますが、どうしても営業プロセスを可視化したい場合はこのような手法もあります。
まとめ
営業プロセスにおける課題
- 理想的なフロー通りに営業が行われているか把握できていない
- 顧客に応じた営業プロセスを設計できていない
- 時間がかかることで、リソース不足やパフォーマンス低下に陥る
プロセスマイニングを用いたアプローチ例
- 理想と現実のプロセスの乖離を分析する
- サイクルタイムを短縮する
効果
- セールスの効率化
- 販売数の向上
- 理想的な営業プロセスの設計